NON DESTRUCTIVE TESTING
超音波探傷試験の手法と特徴
超音波探傷の種類
フェーズドアレイ探傷法
フェーズドアレイ探傷法(Bスキャン)
機械的な走査不要、電子的な走査によって断面画像が得られる→ 1回送信・受信(サイクル)にて得られたAスキャンの集合体でBスキャンが形成される
FMC・TFM法(全断面受信方式)
FMC(フル・マトリックス・キャプチャー)
超音波のアルゴリズムによる送受信技術(全断面受信方式)
フェーズドアレイとは異なり電子的な走査をせず、送受信技術(アルゴリズム)にて全点フォーカジングを行う。各素子にて受信したA-Scan生データを受信後にソフトウエアにてビームフォーミングを行います。
FMC法 | 送受信方法 | 効果・特徴 |
---|---|---|
SAFT | 一素子送受信、送受信素子が同じ | 最も優れた方位分解能、優れていないSN比 |
FMC | 一素子送信全素子受信 | 優れた方位分解能、最も優れたSN比 |
PWI/AFM | 複数素子送信全素子受信 | 良い方位分解能、優れたSN比、高感度 |
TFM(トータル・フォーカジング・メソッド)
FMC技術で取得されたデータから探傷画像を描画する技術。断面画像を描画する範囲の全てにフォーカス効果が得られる。
STEP1:仮想的な焦点位置の定義
断面画像を得たい位置に関心領域を設定します。
関心領域は超音波波長、任意解像度に応じてグリッド化します。
このグリッド化された格子一つ一つが仮想的な焦点位置となります。
STEP2:仮想的な焦点位置と各素子の相対位置に対する遅延時間の計算
STEP3:それぞれの素子で受信された波形に対する遅延制御を実施(位相整合)
STEP4:受信波形全てに対する重ね合わせ
STEP5:重ねあわされた波形の信号強度を輝度値化して、断面画像を描画
FMC/TFMとフェーズドアレイの違いからの特徴
- 全点フォーカスの効果によって、X線CTのような高精細な探傷結果が得られる。
- フェーズドアレイ技術と比較して、高い感度、高いSN比でキズを画像化することが出来る。
- 低い超音波周波数でも、小さなキズを検出することができる。
- 複雑な表面を持つ検査対象にも対応が出来る。
FMC/TFM応用技術の開発 ▶ アダプティブ TFM
表面及び裏面の形状に対する超音波伝搬を補正しTFM計算にて断面画像を得る技術
超音波探傷試験の手法と特徴(まとめ)
手法 | 素子 | フォーカシング方法 | ビームフォーミングのタイミング | 結果 | 特徴 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
送信時 | 受信時 | 受信後 | |||||
UT従来法 | 単一素子 |
機械的走査 (プローブ・フォーカス) |
ー | ー | ー | UT | 従来法は一振動子、二振動子にて、送信・受信を行う。単一素子のためフェーズドアレイよりも検査効率は劣るが、フォーカス探触子を用いて超音波ビームを収束させて細くすることで、固定点によるビームフォーミングを行うことで半導体ウェハーやICチップボンディング肩鎖など、特定の極狭い深さ位置で検査する場合には、最も検査精度の高い測定が可能。 |
フェーズドアレイ法 | アレイ素子 (複数素子) |
電子的走査 (リニアスキャン・セクタースキャン) |
BF | BF | × | ハードウエア PA |
フェーズドアレイは探触子が複数のエレメントに分割された構造でパルサー・レシーバーが接続されており、印加するアレイ素子(チャンネル)を送信と受信を割り振りし、サイクル毎に送信・受信を行い、1シーケンスを形成する。リニアスキャン、セクタースキャンにて可変固定にてビームフォーミングを行う。機械的な走査から電気的な走査により、Bスキャン、Cスキャンを効率的に測定が可能。 |
FMⅭ法 | アレイ素子 (複数素子) |
全断面受信方式 (全点フォーカジング) |
× | × | PA Based BF BF DAS (TFM) |
ソフトウエア PA FMC/TFM |
フェーズドアレイと異なり送信時・受信時にはビームフォーミングを行っておらずアレイ素子全てにて送信・受信を行う。 受信後に任意に受信後に任意にソフトウエアにてTFMのビームフォーミングを行うため、フェーズドアレイ法より検出可能範囲が広くなることがあります。そのため陰になって見えない部分もFMCでは見える可能性が向上します。角度移動による入射点の位置ズレがないため、形状を正確に表示でき、感度が高く、SN比も高い。 解像度が高いBスキャン、Cスキャン測定が可能。 |
FMC/TFMとフェーズドアレイによる比較例
同一のアレイプローブとパルサーレシーバーを用いて取得された探傷画像の結果比較
■試験条件
探傷周波数:5MHz
試験体:アルミニウム合金
人工キズ:ドリル横穴φ1mm